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Interview | 2019.12.2716:00

メディアブランドの可能性を考える。パブリッシャーは何をするべきか?

田端信太郎

個人のセンスや主張が際立つネットの世界。パブリッシャーが運営するメディアはその存在感を失いつつあります。歴史やクオリティ、読者とのエンゲージメントなど、メディアが持つ「ブランド力」は意味をなさなくなるのでしょうか?

「メディアブランド」の可能性について、クライアント、広告代理店、パブリッシャーすべての立場で仕事をしてきた2人、田端信太郎さんとハルマリ代表・島崎昭光の対談をお届けします。

島崎/今回のテーマって、正直田端さんには愚問というか、特にレガシー・パブリッシャーの今後の話なんて議論に値しないと言われてしまいそうですが(笑)。



田端/そんなことないですよ。出版社でも成長するやり方はめちゃくちゃあるし、あとちょっとの、最後のひとひねりの方法論でデジタルシフトすれば全然、もっとうまくいける余地はあると思っています。



島崎/田端さん著作『MEDIA MAKERS』の中で、旧来メディアにある「オーソリティー」の話がありましたよね。例えば「『BRUTUS』が言うなら間違いない」という時代があった。そういったレガシー・パブリッシャーが持つ資産の活かし方ってあると思いますか?



田端/オーソリティーといっても、今の時代はソーシャルフォロワーが多い個人の方がよっぽど偉いというか、ダイレクトに繋がっちゃってるのがネットのモデルなわけですよ。でも、その点では、結局『BRUTUS』みたいな雑誌が典型ですけれど、雑誌って編集長のものであって、ネット以前は雑誌の方が個人の色がはっきり出ていたと思うんです。



島崎/確かに。雑誌って、編集長はもちろん個性的なライターとかカメラマンとかスタイリストとか、読者が注目する個人の集合場所と捉えることができますよね。



田端/その時に『BRUTUS』として、『POPEYE』としてSNSのアカウントをつくっても、いわば「中間」を見せているに過ぎない。個人の色が薄くなるんですね。『BRUTUS』の西田さんは数少ない去就の人事が業界で話題になる方ですけど、ほとんどの雑誌編集長なんて知られてない。だからInstagramでフォロワー100万人みたいな方が、有名なカンバンの有るメディアの編集長になると、メディアとしての知名度と個人のオーソリティが掛け合わさって「強ぇ!」みたいになるんじゃないかと思うんですけど(笑)。



島崎/それでいうと、『NewsPicks』はピッカーという形でオンラインのフォロワーの多い人たちの発信力をうまく融合させて使っています。



田端/そうですね、今の、21世紀の経済・ビジネスメディアのやり方をやっているよなって思うし、僕は本当なら『日本経済新聞』や『ダイヤモンド』とかがやるべきことだったんじゃないかなって思います。



島崎/編集長の在り方も違ってきていますね。個人のセンスで突破するというより、ファシリテーターというか、あまり自分の色とか主張を出す感じではない。



田端/ネット風にやるなら、そうならざるを得ないですよ。もし個人のセンスで突破するなら、組織の編集長じゃなく、キンコンの西野さんみたいになるのが正しい。でも、そこには可能性もあると思うんです。例えば『dancyu』の編集長が、美味しいグルメ情報を交換するサロンなんかをやったら流行りそうじゃないですか。



島崎/僕もそれは入りたいです(笑)。



田端/ですよね! 何でやらないんだろうって思っちゃうんですよ。メディアと関心と、コミュニティーと商売っていうのを一緒くたに紐づけていく。



島崎/メディアブランドってブランド力を持つ個人の集合体だとしたら、その個々の力を活用したビジネスっていくらでも生まれそうな気がします。情報だけでなく、違うアプローチでメディアブランドを活かしている例としては『東京カレンダー』などもあります。



田端/『東京カレンダー』は上手いなぁって思いますね。男女の出会いのマッチングサービスをやってるじゃないですか。ああいうのって、要は出会い系でしょ?って、みんなバカにしがちだと思うんですよ。バカにしたくなる気持ちも分かるんだけど、ブランドの使い方としては、教科書的な使い方だなって。凄い必然性があるじゃないですか。



島崎/ペルソナをしっかりつくって。東カレっぽさっていうのを研ぎ澄ましている。他のレガシー・パブリッシャーの参考になる部分もあると思いますね。



田端/「パブリックにするもの」と考えた時のパブリッシャーって、本質的に何をするべきか、ということだと思うんです。ZOZOがやってる「WEAR」だって、ある種のファッション誌みたいなもんですからね。紙かネットかは、小麦粉かパン粉かみたいな話で。料理だったら美味しいかどうか、メディアだったら面白いかどうか、役に立つかどうか。そういう次元で考えたら、やることはいくらでもある。



島崎/実際、広告主側の期待値は、その本質に向いてきていると感じます。みなさんリーチ論に飽きたというか(笑)。もちろんリーチ効率も大事なんですが、数字だけ見ていると使っている人の実態が見えない。だからこそ、「役に立っている」とか「楽しませている」っていう現象が可視化できるものに注目していると思うんです。期待しているのは紙がデジタルになることではなく、サービスやコンテンツそのものなんだと思いますね。


田端信太郎

リクルート、ライブドア、コンデナスト・デジタル社、LINE、ZOZOなどで数多のメディアの立ち上げとマネタイズを実施。