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Interview | 2017.9.2917:39

読者との絆から新しいメディアのあり方を模索するーOCEANSデジタルプロジェクト

太田祐二
OCEANS編集長
島崎昭光
Harumari Inc.代表

 37.5歳からのメンズファッション&ライフスタイルマガジン「OCEANS」。近年、売り上げ低迷で苦戦を強いられている出版業界の中で、年間定期購読者が25,000人以上、実売数も堅調に推移する希有な男性誌として注目を浴びている存在。低迷していた販売部数を回復させ、現在の地位を確立させたのが2008年から「OCEANS」の編集長を務める太田祐二氏。
 2017年からHarumari Inc.(当時螢光E.T.)をパートナーに「OCEANS」のデジタルビジネスを開始。WEBマガジンのリニューアルやECサイトとの融合など新しい取り組みを矢継ぎ早に展開しています。そんな太田編集長とHarumari Inc.代表の島崎による対談をお届けします。取材・文 郷田絵梨 ※以下、敬称略※

大ヒットした“オッサンスナップ”

今年のOCEANSデジタルプロジェクトが始まって、半年がたちました。お二人の率直な印象を聞かせてください。

<島崎>いま実感しているのは、OCEANSは本当に読者との絆が深いなということです。WEBアクセスも順調にのびて早い段階で月間PVが100万を超える状態になったというのもあるんですが、リピート訪問数や、滞在時間の長さなど、通常のWEBマガジンに比べると圧倒的にユーザーの質が高いです。正直、もっと早く始めてればよかったのに、っておもっちゃったんですが、太田さん的に、いつからWEBを意識してました?

<太田>2015年くらいかなぁ。OCEANSも本腰入れていかないとマズイかも…、と重かった腰を上げ始めたのは。時代のニーズと、スポンサーの要請と、あと、今後そういう流れ(WEB版でも積極的に記事が読まれる時代)になっていくんだろうな、という意識は当然それ以前からありました。広告主で、特にグローバルで展開するようなブランドは、大きいブランドほどデジタルにシフトしていくというのがわかっていたし、年々そういう傾向が強くなっていますしね。

—それでも「OCEANS」の雑誌広告は順調にスポンサーが入っている印象があります。雑誌については、太田さんが編集長に就任されてから、いつ頃から安定していると感じましたか?

<太田>安定っていうか、「あれ、潮目が変わるかも!?」と感じたのは、編集長になって約2年を迎えた頃でしょうかね。2009年末から2010年になる頃だったと思います。

<島崎>それは、何かきっかけがあったのですか?

<太田>今だから言えますが、当時の僕らの部数、どん底だったんですよ。まだ世の中は今ほど「出版不況」と言われる状況でもなかったのに……。当然広告の入りもそれに比例して思わしくないわけで。会社からは、編集費を抑えつつ部数を伸ばすことを求められました。当たり前ですが、ね。そんななかで企画したのが、現在も続く特集「街角パパラッチ」です。つまり“オッサンのスナップ”ですね。おいらはそれまで雑誌編集者をやってきて、世界の“オッサン世代”のなかでお洒落の平均レベルが一番高いのは実は「日本のオッサン」だと思っていました。ただ、雑誌で若い世代の日本人のスナップ特集はあっても、日本人のオッサンたちのスナップ特集は当時ほとんどなかった。だから、いつかやってみたいな、と。でも読者はわざわざ雑誌でリアルな日本人のオッサン世代のファッションスナップなど、はたして本当に見たいのかどうか……と躊躇するところもありました。でも、スナップ企画というのは、モデルを起用しスタジオなどを利用する通常の誌面よりも、制作コストをある程度抑えられるんですね。だからその時の状況的には「もう躊躇してる場合じゃないわ!」だったんです(笑)。確か2009年の12月売りの号で初めてその特集をやりました。結果、発売後1週間で完売した。「あ、何かが変わったかも」と感じたのはそこがきっかけだったと思います。

<島崎>すごい。

<太田>はい、編集部員一同「何かの間違いじゃないか?」って、自分たちがいちばん信じられなかったという(笑)。

<島崎>でも確かにOCEANSのウェブも、スナップのアクセス数が多いんですよね。モデルとかがバッチリ決めた写真じゃなくて、リアリティのある等身大のスナップって、若い子なら興味があるコンテンツなんだろうって思ってたんですけど、30~40代の男性がスナップをそんなに見るか?って思っていたものの、流入は本当に多くて。

<太田>本誌も「街角パパラッチ」で救われたし、ネットでもそれだけ反応があるって、やっぱり、オッサンスナップって根強い人気があるコンテンツですよね。でも、今や単にスナップ特集をやるだけでは以前ほど新鮮味がないのも事実。今後OCEANSは本誌もWEBも、スナップ特集のような“リアリティ”と“憧れ”の絶妙なバランスポイントを見つけて、新たな楽しい企画を考えていかないといけませんね。

—HOW TO ENJOY ‘オッサン’LIFE

<島崎>太田さんとデジタルのコンセプトを作るときに、HOW TOですよね、って話になったじゃないですか。HOW TOっていうのは、OCEANSのイズムであると同時に、WEBの相性が良かった。新着出ました、とか、どんな店オープンしました、っていうものより、どうやってリアルに着こなすか、っていうHOW TOモノは、ファッションに限らず、ネットを見ている人と相性が良いんです。



<太田>でも、ネットで見る記事っていうのは、もっとこう、のぞき見的っていうか、下世話な話とか、スキャンダルとか、そういうほうが、相性がいいのでは?と思ってはいる。そうだとしても、OCEANSでは極力そういう記事でPVを稼ぐことはしたくない。それでどこまで行けるのか挑戦したい、という意識ってどこかにありますよね、島崎さんも。



<島崎>そうですね。そういう意味では、PVが“まじめな記事”でとれているのって、ネットの記事では珍しいんです。車、女、ハゲ、芸能ネタ、とかが多い中で、安定して万単位で読まれている記事がOCEANSは多い。まじめにWEB OCEANSのファンになっている人が多いっていう感じはしますね。

OCEANSのデジタル展開の行き先は?

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—太田さんは今回、雑誌編集長の立場でデジタルをみているわけですが、これまでのHarumari Inc.との取り組みを振り返っていかがですか?

<太田>「アンタたち、サイコーよ!」と思うのと同時に、「満足できないゼ、もっともっと!」とも思ってる(笑)。OCEANSは常々、何かしら“オッサンを楽しむ”ためのコンテンツを作ろうとしているわけですが、ハルマリのチームには、その感覚をわかってもらえて、コンテンツを考えてもらえる。あと、誌面ではやりたいけど、できないことをやりたい、っていうおいらの漠然とした要望も、ちゃんとカタチにしてくれているっていう。

<島崎>ありがとうございます。普通の編プロだと、指示通り動くだけだろうし、逆に、メディアだと、自分らの好きなことばっかりやるっていうか。でも、僕が広告クリエイティブ出身なんで、クライアントソリューションっていう視点で、太田さんたちのニーズとか要望にどう応えるか、っていう脳みそが入っていつつ、自分たちの手の内でやるっていうバランスは、意識してるんですよ。

<太田>素朴なギモンがあります。我々は、ハルマリにOCEANSという既存の紙メディアのWEB版の制作に関わってほしい、という依頼をさせてもらったわけですよね。そのときに、実際にどう思ったのかな?と。依頼した時点でもう創刊から10年近くも経っていた。そのOCEANSチームと、突然たった今から同じ感覚や価値観を持ってやってくれって言われても、ねぇ。やりにくいでしょ?

<島崎>雑誌の資産っていうのは、デジタルで使えるものと、使えないものがあると思っています。どこをどう資産として使い、どこを捨てるかみたいなところで、どうやってWEBの読者をひきつけるか、っていうのは誰も答えが出せていない世界なんで。これは、難易度が高くて面白いお題だ!と思いました。

<太田>島崎さんから見て、OCEANSの資産は何?

<島崎>やっぱり、読者との絆だと思います。で、捨てるのは、たぶん、「ファッション誌」という立ち位置。ファッションを通じて提供している「ライフスタイル」ということを根っこにおきながら「ファッション誌だから…」という発想を捨てる必要はありましたね。OCEANSがつくりあげてきたブランドの上に、ファッションだけじゃなくて、ライフスタイルのほうでもっとブランドの価値を積み上げていくことだと思っています。雑誌では、それはできないことだと思うんですよ。

<太田>そう、我々としては、OCEANSはライフスタイル誌でありたいという想いを持って作っている。ですが、まぁ、一般的には、これ、ファッション誌に見えるわけです。コンテンツの7~8割がファッションに関わることですしね。だけど個人的には、もっとオッサンに関わる雑多なコンテンツを展開したい。それで商業誌としてカタチにできればいいんですが、なかなか難しいんですよね。でも、WEBに展開するときに、そこが少し拾えたらいいな、という想いがあったので、ちょうどよかった。

近いうちに実現させたい“大オッサン展”

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<太田>「オーシャンズとレジャー」(※OCEANS読者世代のための、オフタイム充実プロジェクト。サーフィンや靴磨きや美味しいカレー作りやコーヒーの淹れ方など、様々なアクティビティに編集部が挑戦する、というWEB版オリジナルの連載企画)は、もともと読者イベントとして始めたものなんですが、あれはいいよね! イベントで実際に会う同世代の読者の皆さんから「俺たちはオッサンライフを楽しみにたいんだー!」とその心の叫びというか、純粋な熱さにいつも刺激を受けます。そこに何かすごく可能性を感じているんですが……。

<島崎>僕も感じてます。ちなみにネーミングですが、雑誌の人って、ダジャレが好きなんでしょ?って思いながら、“トレジャー”と、“レジャー”をかけたんですけどね、すみません(笑)。

<太田>あの連載や読者イベントに反応する人が多いのは、どこかイマドキのオッサン像を捉えているからなんだと思います。OCEANSが提案したいのは、オッサンになった自分を素直に受け入れた上で、健康的でアクティブなライフスタイル。あくまでも、地に足がついて、ちょっとだけ背伸びする程度で楽しめるオッサンライフを提案したいんですよね。

<島崎>わかります。記事だけじゃなくて、具体的な場づくりまでできるっていうところに、やっぱり面白さもある気がしていて。洋服だったら、普通、記事を紹介したらお店に買いにいけばいいっていう話なんだけど、カレーだったら、カレーのHOW TOを提供して、みんなでカレーをつくる場までつくれちゃうっていう。僕、個人的にやりたいのが、オーシャンズマーケットをやりたいんです。パシフィコ横浜ぐらい借り切って、会場内は燻製とかカレーとかのパビリオンになっていて。そこで、ワークショップをやるんです。

<太田>いいね、オッサン展。

<島崎>そう、オッサンのくらし展、的な。(笑)まじめな話をすると、読者とエンゲージメントが高いということは、お金を落としてくれる人が多いっていうことで、いわゆる、ファンマーケティングと一緒で、メチャ好きなアーティストのTシャツ買っちゃったり、ライブ行っちゃったり、っていうか。いかにファンと密になって、その人の客単価を上げるか、っていうことが、ひとつの雑誌の未来だと思っていて。マスになろうと思わないで、10~20万人規模の人たちの客単価を上げていくほうが、楽しいし、安定していくと思うんですよ。

<太田>なるほど。その究極が、オッサン展。そこに行けば、オッサンのささやかな喜びや幸せが見つかる。で、オッサンの毎日が楽しくなる。まさに「オーシャンズとレジャー」ですね。

<島崎>そこで、ギアも売ってるわけですよ。コーヒーブースには、ワークショップとギアがあって。カレーブースでは、カレーが作れるキッチンスタジオみたいなのがあって、で、カレー粉が売ってるみたいな。っていうのが、10コくらいある。

<太田>それ楽しい。

<島崎>で、タイムテーブルみて、オッサン同士で、これ、何時に行くわ、みたいな。

<太田>ボーイスカウトの頃のジャンボリーを思い出します(笑)。

雑誌の資産を生かしながら、ファッション×ライフスタイルメディアのブランド価値を積み上げていく、今はまだその実験途中だというOCEANSデジタルプロジェクト。イマドキのオッサン像を捉え、より読者と強い絆を作り上げていく、今後の展望が明らかに。“大オッサン展(仮称)”の開催も、ぜひ期待したいところです!!


太田祐二

OCEANS編集長

島崎昭光

Harumari Inc.代表